| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-13 (Poster presentation)
昨今、生物多様性の保全を都市公園でも行うことが重要視されている。その中でアリは、様々な動植物と共生している他、捕食者の一方、被食者でもあり生態系において様々な生物間相互作用が知られている種である。このアリの生態を明らかにすることは、生物多様性の保全につながるであろう。
都市公園の広場でアリの観察を行っていると、樹の周りの方がただの砂地のところより巣を作っていることが多いという傾向が観察された。そこで本研究では樹近くの方が樹から離れている地点よりアリの巣が多く作られているという仮説を立てて、その調査を行なった。
本研究では東京都新宿区の戸山公園箱根山地区のアスレチック広場において、2024年5月から2025年1月まで毎月1回分布調査を行なった。アスレチック広場の砂地に限定して調査し、アリの巣の種類と個数を記録し、巣の場所をプロットした。
結果、どの種類においても樹や遊具の近くに巣を作っていることが多かった。樹からどれくらいの距離に巣を作っているのか調べるためにクロヤマアリに着目して樹と巣の距離を調べた。結果、樹から50〜60㎝の場所に多く巣を作っていた。
人による踏まれやすさによってこの傾向が生まれているのではないかという仮説を立てて、巣の周辺と巣から2m離れた砂地の地点の土壌硬度を山中式土壌硬度計を用いて測定した。結果、巣の周りの支持力強度が19.94 kg/㎠、巣から2mの地点の支持力強度が53.22 kg/㎠となり、巣の周りの方が土壌硬度が低い、つまり土壌が柔らかいことがわかった。
結論として、都市公園の広場において樹の周りの方がアリの巣が多くなり、樹から2mの地点でアリの巣があまり観察できないことは樹の下にあることで人が踏みにくく、土壌が柔らかくなっていることが考えられた。また、樹からの有機物供給がアリの巣の存続に影響している可能性がある。今後はこの可能性について明らかにしたい。