| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-14 (Poster presentation)
クビアカツヤカミキリAromia bungii(以下クビアカとする)は、幼虫の時期にソメイヨシノ Cerasus×yedoensisなどを食害し最終的に枯死させる特定外来生物である。私たちは被害拡大を止めるために2021年から調査・研究をしている。その成果をもとに2024年に所沢北式防除策を作成した。被害の最前線を定め、最前線から被害拡大が予想される範囲のソメイヨシノを胸高直径約20cm未満で樹皮が滑らかな樹木に植え替えるという防除策である。
所沢北式防除策は広範囲の植え替えが必要なため、樹木の植え替えに関して優先度を設ける必要があると考えた。そこで今回の研究では、所沢北式防除策をより具体化するため、樹木を被害危険度という階級に分け、優先的に植え替えが必要な樹木を判断することを目的とした。調査木のソメイヨシノ104本に対して割れ目、はがれの有無と被害の有無を調べた。(岩田隆太郎,2018)にクビアカは樹皮の亀裂などに産卵し、幼虫は樹木の内樹皮を食害すると述べられている。そこで内樹皮が露出している樹木は被害を受けやすいと考え、同様の調査木に対して樹皮に割れ目がない樹木を危険度Ⅰ、内樹皮に達しない割れ目であるひびを持つ樹木を危険度Ⅱ、内樹皮に達する割れ目を持つ樹木を危険度Ⅲとして定め、これらの危険度と被害の有無の関係を調べた。その結果、被害木は割れ目、はがれをもつ樹木が多く、それらを持たない樹木は少数だった。非被害木では割れ目やはがれが確認されなかった。更に被害木は全て危険度Ⅲであり、非被害木には危険度Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ全ての樹木があった。よって、内樹皮に達する割れ目やはがれを持つ樹木は被害を受けやすいと考えられる。これらのことから、樹木を被害危険度という階級に分けることで、優先的に植え替えが必要な樹木を判断することが可能になり、所沢北式防除策の実行性を高めることができた。