| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-19 (Poster presentation)
中学3年生の夏、夏休み課題でニホンザリガニの生態について調べていたが、私の住む札幌市内での先行調査がなく、ないのであれば自分でやろうと思い、この研究を始めた。
ニホンザリガニの生態を調査するとともにその保全のために必要なことの糸口を掴むため、札幌市とその周辺の160箇所を3年間調査し、その都度水温、水深、ザリガニの個体数、周辺環境などを記録した。その結果、個体数は2022年度では72匹、23年度では41、24年度では44と、22年度から、23年度にかけて急激に数を減らしていた。理由としては気温の急上昇が原因と考えられる。実際、気象庁によると23年度の札幌市の8月の平均気温は前年より+4.0℃上がっていた。ニホンザリガニが見つかった場所で記録した水温も22年度では18.2℃だったが、23年度には22.0℃となっていて、気温の急上昇によるニホンザリガニの大量死滅を裏付けている。また、ニホンザリガニが見つかった全ての場所には広葉樹が広く生えており、餌となる他にも直射日光を防ぐ効果があると考えられる。また、分布に関しては札幌市の中では南側は1箇所しか生息地が確認されず、小樽方面により多く生息していることがわかった。これは札幌市の大部分はすでにウチダザリガニなどの天敵が広く分布しており、ニホンザリガニの生息地が北へと追いやられてしまったのだと考えられる。さらに生息地の水辺は川幅が非常に狭く、水深がほとんどないようなところから、比較的浅いところに生息しており、湧水が出ているところや、非常に水が綺麗なところに生息していた。
そしてニホンザリガニを保全していくためには、生息地の開発を防いでいくことが必須と考える。実際、良質な環境でも事業開発されている例もあった。こうしたことを防ぐため、環境アセスメントの対象となる事業に希少種の生息地での開発を加えるべきであると考えた。