| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-22  (Poster presentation)

The Effects of River Improvement on Biological Productivity in the Tatsuta River: Basic Research for Nature-Positive Approach【A】【O】

*KOHHEI YOSHIKAWA(Naragakuen senior high school)

河川改修は人間の生活に必要な取組みである。一方で日本の河川生態系はそうした人間
活動によって激しく改変されてきた。河川生態系は特殊、多様で人間活動と密接に関わっ
ており、近年その両立をめざして環境アセスメントや自然再生事業などの生態系保全の取
組みが活発に行われている。また、生態系の回復を目指す「ネイチャーポジティブ」の取
組みもなされている。そうした取組みをより適切に行うためには「改修に対する環境の応
答」が基礎情報として必要であり、それらの不確実性が問題となっている。
本研究ではこれを生物生産に焦点を当てて明らかにすることを目的とし、自然な状態な
区域と改修が施された区域での生物生産の様子の違いを検証するために、奈良県内を流れ
る大和川でモニタリング調査を行った。
調査は、2024年9月2日~9月6日に、大和川の中流域に設定した自然区、改修区でそれ
ぞれ実施した。2区はそれぞれ延長約200mで、比較実験を成立させるため近接させて設定
した。調査項目は、7項目の水質(水温、EC、pH、DO、濁度、SS、COD)と基礎生産を担う2項
目の生物(付着藻類、底生動物)についてである。水質調査は専用機器で、生物調査は既存の定量調査法に基づいて実施した。また、生物調査は各地点で3点ずつサンプルをとり、t 検定を行った。
調査の結果、付着藻類の数は自然区の方が多く、有意差も認められた。底生生物の数の有
意差は認められなかったが、自然区で平均値と標準偏差が大きかった。水質には大きな差はなかったが生物調査の結果を裏付けるものもあった。これらの原因の考察を以下に示している。
・付着藻類…改修による水深と濁度の差によって改修区に太陽光が届きにくいことが原因。
・底生生物…サンプル数の不足が原因。また標準偏差の差から改修区で生物が定着しづらい沈み石が多く分布していると考察。
以上から生物生産性は改修区に対し、自然区の方が高いと考察した。


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