| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-23 (Poster presentation)
珪藻は光合成を行う原生生物で、淡水から海水まで幅広く生息する。そのため水質調査の指標や示相化石としても用いられている。しかし種類の同定に殻の電子顕微鏡観察が必要になってくることから、現生の珪藻の種類に関する研究はあまり行われていない。
また、水域生態系において、生産者としての役割を持つ珪藻の個体数の変動を明らかにすることは、食物連鎖や生態系を理解するために重要である。そこで本研究はビオトープにおける珪藻の種類と個体数の季節変動を明らかにすることを目的とした。
調査は千葉県柏市にある増尾城址公園内の地下水を水源とするビオトープで、2024年7月から2025年1月まで2週間ごとに行った。ビオトープでは、バイアル瓶の口で岩の表面の付着物を削り取りながら20 ml程度採水した。採水と同時に水温と気温の測定も行った。採水した水は光学顕微鏡とプランクトンプレパラートを用いて観察した。観察の際は、4マス分にいた珪藻を同定した。さらに、6×6マス中に確認できる珪藻の数を記録した。
同定の信憑性を高めるために、電子顕微鏡観察も行った。観察の際はパイプ洗浄剤によって殻を洗浄し、ホットプレートによって水分を蒸発させた。同定は「珪藻観察図鑑」とインターネットを用いて行った。
水温の年変動が気温と比較して小さかった。これは湧水を水源としていることによると考えられる。個体数は11月21日以降多くなっていた。珪藻の個体数全体の、26.5%をナビクラが占めていた。ナビクラ,アクナンテス,ニッチア/ハンチアの3種で個体数全体の53%を占めていた。これらの種は淡水ではよく見られる種である。他にもナビクラ,アクナンテス,ニッチア/ハンチア,スリレラ,シネドラ,キンベラなどが見られた。40μm未満の珪藻の同定には、電子顕微鏡が必要であった。