| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-24 (Poster presentation)
近年、SDGsの取り組みによってフードロスの解決が注目されている。フードロスの原因の一つが農作物の大量廃棄であり、そのうち3割が植物ウイルスなどを持つ病害虫によるものとされている。これを解決する方法として腐敗したアオサの利用を考えた。アオサには多糖類のラムナン硫酸が含まれており、これがエンベロープウイルスに対して抗ウイルス活性を示すことが確認されている。また、アオサが大量発生し、海洋生物に悪影響を与えていることが全国的に問題となっている。これらのことから、腐敗したアオサを植物ウイルス病の防除として利用することが有効的であると考えた。
「植物ウイルスでもエンベロープを持つウイルスであればラムナン硫酸の抗ウイルス活性が確認できるのはないか。」という仮説を確かめるべく、私は比較実験を行う。今回の実験の対象ウイルスはトマト黄化えそウイルス(以下、TSWV)、対象植物はトマトである。実験方法は、まずトマトの葉の表面をカーボンランダムで削り、そこにTSWVを含んだ液をつけることで健全なトマトに感染させる。次に、感染した個体をラムナン硫酸を与える個体と与えない個体に分け、与える個体にはTSWVの病徴を確認した後、ラムナン硫酸を混ぜた純水を1ヶ月間毎日与える。反対に、与えない個体には病徴の確認後、純水のみを1ヶ月間毎日与える。そして、トマト1個体のすべての葉のうち、何枚の葉に病徴が現れているのかを記録する。
予想される結果としては、ラムナン硫酸を与えた個体のほうが病徴の発現の進行具合が抑制され、全体の50%未満の葉にしか病徴が発現しないと考えられる。
現在の研究の段階としては、ラムナン硫酸を植物に吸収させる方法を探っている最中である。そのため、本大会で実験結果を提示することは難しいため、進めた段階までの考察を展開したい。