| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-25  (Poster presentation)

ヨシバイオフィルムによるアオコ抑制効果は産地で異なる:ため池間の事例【A】【O】
Variation in Algicidal effects by Reed Biofilms Across Sites: A case study in Irrigation Ponds【A】【O】

*中野脩平(清風高等学校), 風間健宏(兵庫県立大学)
*Shuhei NAKANO(Seifu HIgh school), Takehiro KAZAMA(Hyogokennritu Univ)

ヨシバイオフィルムによるMicrocystis aeruginosaの増殖抑制特性

*中野脩平(清風高等学校),風間健宏(兵庫県立大学)

アオコは湖沼やため池で景観の悪化、水質汚染、生物の死滅を引き起こす。従来の対策ではコストや労力がかかり、生態系への影響もある。ヨシの茎表面に形成されるバイオフィルム内の殺藻細菌には、アオコ原因種 Microcystis aeruginosa の増殖抑制効果があるが、池ごとの効果の違いは不明である。そこで本研究では、アオコの発生状況が異なる4か所の池からヨシバイオフィルムを採集し、M.aeruginosaの増殖抑制実験を行った。

実験は9 月に計2 回実施した。兵庫県内のアオコが発生していない池(新池、下池)と、発生していた池(小鳥喰池、布池)に生息するヨシの茎から、バイオフィルムを滅菌ブラシで1 m分採集した。採集したバイオフィルムを蒸留水100 mL に懸濁し、3 μm 孔径のフィルターで濾過してバイオフィルム懸濁液(以下、BF 懸濁液)を作成した。M. aeruginosa培養株と培地80 mLとを加えた滅菌フラスコに、各池のBF 懸濁液10 mL または蒸留水10 mL(コントロール)を添加した。繰り返しは4とし、バイオフィルム採取時の池の水温に設定したインキュベーター内で光強度100 μmol photon/m²/s、明暗周期12:12 で4 日間培養した。

1回目の実験では、4 日目の下池BF 懸濁液添加区のみで M. aeruginosa の細胞密度および光合成活性が低下した。しかし、2回目の実験では、4 日目の下池および布池のBF 懸濁液添加区で細胞密度の減少および光合成活性の抑制が確認された。これらの結果から、バイオフィルムによる M. aeruginosa の増殖抑制効果は池ごとに大きく異なる可能性が示唆された。さらに、布池は実験2 のみで殺藻効果が確認されたことから、ヨシバイオフィルムの効果は時間とともに変動する可能性がある。発表では、アオコ抑制効果の時空間的な違いを生む要因について議論する。


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