| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-26 (Poster presentation)
シダ植物は花が咲かないため複葉の回数、胞子嚢のつき方、鱗片の有無などから種を同定する必要がある。また教科書にはシダの生活環について説明やイラストはあるが実際の写真が載っていないことが多い。
そのため、本研究は身近なシダ植物の種類、生息場所、繁殖方法についてを生態学的な視点から明らかにすることを目的とした。研究対象としては通年を通して扱いやすい常緑性の種が多くを占めるオシダ科を選択した。
調査は、千葉県柏市の増尾城址公園で12〜2月に各月2回ずつ行い、種と生息場所、地表温度、照度を測定した。
調査の結果オシダ科はベニシダ、ヤブソテツ、ヤマイタチシダ、オオイタチシダが、他の科ではオオハナワラビ、ヒメワラビなどが生息していた。
ベニシダはヤマイタチシダと群生していたが、ヤブソテツは単独で疎に分布することが多かった。またベニシダはシラカシの木の近くや根本に生息していた。
生息箇所の地表温度はベニシダの方がヤブソテツに比べて高い所に生息していた。ベニシダは本州から沖縄、ヤブソテツはより寒冷な北海道から九州に分布しており、それに対応するような住み分けが同じ場所でもなされていることがわかった。
照度についてはベニシダの方がヤブソテツに比べて明るい環境に生息することがわかった。これは他の植物や同じ植物の生息密度の影響であると考えられる。
繁殖についてはベニシダの胞子を採取し、前葉体の発生を観察した。採取方法は胞子嚢のついたベニシダの葉を紙の上で固定し乾燥させた。採取した胞子をパイプ洗浄剤で殺菌し、クリーンベンチ内でMS培地及び園芸用培養土に蒔いた。その結果MS培地ではカビが生え、前葉体の観察はできなかった。園芸用培養土では約45日後に前葉体の発生が確認できた。要旨作成時の60日後には造卵器、造精器が見られなかったため少なくとも造卵器、造精器が形成されるまで60日以上必要だと考えられる。