| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-28 (Poster presentation)
樹木には、資源を繁殖と成長に資源配分を切り替える生存戦略の一つであるトレードオフの関係があることが報告されている。繁殖に資源を配分する年は成長量が少なくなり、成長に資源を配分する年は種子生産量が少なくなる。タブノキは、夏季に結実する照葉樹林の主要構成種の一つである。上野高校に隣接する上野城にはタブノキが生育しており、2023年タブノキの繁殖が観察されなかった。2024年にはタブノキの繁殖が観察された。タブノキはトレードオフの特性をもつかは明らかにはされていない。繁殖が観察された年とされなかった年があったことからタブノキにもトレードオフのような資源配分のしくみが存在している可能性がある。そこで本研究では上野城に生育するタブノキを対象にタブノキにトレードオフが存在を調べることを目的とした。上野城に生育し、繁殖可能サイズであるタブノキ3個体の樹冠下に1m×1mのリタートラップを設置した。リタートラップは2023年8月から設置し2024年12月まで計測した。2023年8月から2週間に一度、トラップ内の落葉を回収し1週間乾燥させ落葉の乾燥重量を測定した。葉を落葉させた分だけ新葉を展開するので落葉量を成長量の指標とした。2023年8月と2024年8-12月までの落葉量を比較すると、個体1では、2023年は116.4g/m2、2024年は180.3g/m2、個体2では、2023年は116.1g/m2、2024年は199.7g/m2、個体3では、2023年は101.0g/m2、2024年は263.7g/m2となり、2023年と2024年を比較して調査個体すべてにおいて落葉量の年次変動がみられた。3個体の合計落葉量は、2024年は643.7g/m2、2023年は333.5g/m2となり、2024年のほうが、落葉量が多かった。観察できた3個体とも5月の落葉量が多くなっておりタブノキの新葉展開時期と一致した。2023年に繁殖がみられず、2024年に繁殖がみられたことと、落葉量に年次変動の差異があったためタブノキにもトレードオフのような資源分配の特性が示唆される。