| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-30 (Poster presentation)
バイオチャーは動植物由来の材料で作られる炭化物で、土壌改良効果を有し、収量増加が見込まれている。さらに作成時にCO₂を排出しないため、環境に与える影響が少ない。しかし、収量に直結する養分吸収や倒伏に関わる根がバイオチャーからどのような影響を受けるかは未解明である。そこでホウレンソウを用いて、バイオチャー散布が植物の根と収量に与える影響を明らかにした。
埼玉県にある学校の屋外菜園を5.5m²ずつ3区画に分け、未処理のC0区、バイオチャーを1m²あたり2kg、4kg散布したC2区、C4区とし、ホウレンソウを88日間栽培した。植物は成長過程で茎の自然高・全長・直径、葉の枚数を、収穫時に根の全長・太さ・重量、側根の本数を測定した。土壌環境は、地温、土壌含水率、pH、電気伝導度(EC)、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)の濃度、微生物の指標である微生物呼吸(BR)と基質誘導呼吸(SIR)を測定した。
C2区の自然高と葉の枚数がC0区、C4区と比べ有意に増加した。また、土壌含水率、地温、BRの値が高かった。これはバイオチャー散布により保水性や保温性が高くなり微生物の活動が活発になった結果、土壌中の養分が増え成長を促進したと考えられる。根の重量もC0区、C4区に対してC2区で有意に増加し、側根も多くなった。ECはC2区<C4区<C0区と有意差がでていることやC2区でPが多い傾向から、ECの増加が植物の成長を抑制するとともにPの存在が根の成長を促進したと推察される。一方で根の長さはC2区のみならずC4区でも増加が見られたことから、C2区やC0区と比較し、C4区では水平方向より垂直方向に根が伸長することが示唆された。
以上より、バイオチャー散布により植物の地上部も根も成長が促進すること、散布には適量があり過剰に撒くことで垂直方向への根の伸長が優先され、効果が弱まることが明らかになった。