| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-32  (Poster presentation)

バイオチャー散布が植物の生理活性に与える影響の多角的検証【A】【O】
Multifaceted examination of the effects of biochar application on plant physiological activity【A】【O】

*高橋虎嗣, 澤田尚樹, 金子知樹, 宮本悠希, 安藤大貴, 小山悠太(浅野中学・高等学校)
*Toraji TAKAHASHI, Naoki SAWADA, Tomoki KANEKO, Yuki MIYAMOTO, Daiki ANDO, Yuta KOYAMA(Asano high school)

 バイオチャーには炭素隔離効果や土壌改良効果、植物の成長を促進する効果などが報告されており、地球温暖化の緩和や作物の収量増加に貢献できる材料として注目を集めている。しかし、バイオチャーの適正散布量に関する研究が多い一方で、サイズの違いに着目した研究は少なく、成長に関わる生理活性(呼吸や光合成速度)への影響を含めた多角的な検証は行われていない。本研究ではバイオチャーのサイズの違いが植物の成長・生理活性に与える影響を検証し、地球温暖化を緩和する手段としての有効性を評価した。
 予備実験として散布量を変えた実験を行い、本実験における最適散布量を検証した。次に、予備実験の結果に基づきバイオチャーのサイズ( A:6〜20mm、B:2〜5mm、 E:1mm 以下)を変えた比較実験を行った。カイワレダイコン、ハツカダイコンを対象に各器官の長さを継続的に測定し、収穫後に各器官の重量、葉緑素量、土壌環境を計測した。また、呼吸・光合成速度は密閉法を用いて測定した。
 バイオチャーはサイズに関わらず植物体、特に同化器官の成長を促進し、生理活性も有意に高める結果(総重量、葉の長径・重量、茎の長さ、光合成速度で有意差あり)を示した。特に、両種ともサイズA、Bにおいて収量と光合成量が著しく増加していた。この要因として土壌中の栄養塩類を吸収できる量が増加し、植物体の成長が促進されたことが挙げられる。これはサイズの大きいバイオチャーによって土壌に団粒構造ができたことで、根を伸ばしやすい環境になったことに起因している。また、バイオチャーのサイズや植物種によって成長が促進される器官に違いがあることを確認した。
 本研究より、バイオチャーのサイズが大きいものにおいて、同化器官量や収量が有意に増加し、光合成活性も高くなったことから、適正なサイズの選定によって植物の炭素固定機能を効率よく高めることができると考えられる。


日本生態学会