| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-33  (Poster presentation)

バイオチャー施用と落ち葉床での処理後1年:土壌及び作物に与える影響【A】【O】
One year responses in soil and crops to biochar and leaf mold amendment【A】【O】

*増渕楽, 武川直央, 櫻井陽真, 齋藤真美, 山田優吾, 清水裕介, 川田諒, 棚澤由実菜(東京農業大学第三高校)
*Gaku MASUBUCHI, Nao MUKAWA, Haruma SAKURAI, MAMI SAITO, Yugo YAMADA, Yusuke SHIMIZU, Ryo KAWATA, Yumina TANAZAWA(3rd H. S., Tokyo Univ. Agric.)

生物資源を材料とした炭化物であるバイオチャーと落ち葉や枯れ草を畝の下に埋める伝統農法である落ち葉床は、環境への負荷が少なく、土壌改良による収量増加が期待できる。しかし、その効果が持続する期間は未解明であり、作物種によっても反応が異なると言われている。そこで、処理後1年間のバイオチャー散布と落ち葉床に対する作物の応答と環境への優しさを解明するとともに、種ごとの影響を比較することを目的とした。
2023年10月、畑に未処理の土壌(N区)、バイオチャーを散布した土壌(C区)、落ち葉床(L区)を作成し、土壌環境としてpH・電気伝導率(EC)・含水率・地温・微生物の指標として微生物呼吸量(BR)と基質誘導呼吸量(SIR)を測定した。また、環境の優しさとして土壌からのCO₂放出量(SR)も計測した。2023年10月と2024年10月にダイコンを栽培し、葉の長さ・葉緑素量を成長、収穫後の重量・長さ・体積を量、最大直径・糖度・水分率を質として測った。さらに2024年にはホウレンソウでも同様の測定を行った。
C区はN区に対し両年ともダイコンの成長、収量が増加した。これは2023年は地温、2024年は土壌含水率が高い値だったためと考えられる。L区は2023年はN区と成長・収量に差がなかったが、2024年はSIRとともに増加したことから、微生物による落葉の分解が促進され、土壌中の養分が増加し成長したと考えられる。SRはL区よりC区、N区でCO₂の排出を抑えられた。作物種間の比較では、ダイコンでは量、質ともにC区、ホウレンソウでは量はL区、質はC区でそれぞれ向上した。根菜のダイコンは土壌含水率の高さに左右されるのに対し、葉物野菜のホウレンソウは影響を受けにくいと推察される。
以上のことから、バイオチャー散布は落ち葉床と比べ、CO₂排出を抑え、葉物野菜は質、根菜は質、量を向上させることが明らかになった。


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