| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-41  (Poster presentation)

岐阜のマホロバサンショウウオはどこからやって来たのか?【A】
Expansion of distribution of the Mahoroba salamander to Gifu【A】

*竹内啓太, 川瀬幸貴, 白木瑛翔, 綴喜美慧, 篠原菜々華, 小林祐介, 高木雅紀(大垣北高等学校)
*Keita TAKEUCHI, Koki KAWASE, Eito SHIRAKI, Misato TSUZURUKI, Nanaka SHINOHARA, Yusuke KOBAYASHI, Masaki TAKAGI(Ogaki-kita High School)

【背景・目的】
本校のサンショウウオ班は,大垣市に生息するマホロバサンショウウオ,ヒダサンショウウオの生活史や生息適地について研究を重ねてきた.昨年度行った系統解析の結果は,マホロバサンショウウオが西から岐阜県に分布を広げてきたことを示唆するものであった.そこで,調査対象地域を近畿地方を加えたマホロバサンショウウオの分布域全体に広げ,どのように岐阜県西部に到達し,岐阜県内で分布を広げたかについて詳しく知りたいと考えた.
【材料・方法】
マホロバサンショウウオの岐阜県内及び岐阜県周辺の集団に近畿地方の集団を加えた全89個体からDNAを抽出し,mtDNAのCytochrome(シトクローム) b領域の一部の572塩基を配列解析し,ミスマッチ分布解析,系統解析を行った.その結果から,系統樹,ハプロタイプネットワーク,Cladeごとの分布図を作成した.マホロバサンショウウオとヒダサンショウウオの生息確認地点と岐阜県内の主な河川,標高を地図上に重ね合わせた図と岐阜県内における生息確認地点ごとの標高の分布図を作成し,両種を比較して分布の特徴を分析した.
【結果・考察】
系統解析の結果,分布域全体において,マホロバサンショウウオは3つのCladeに分けられた.マホロバサンショウウオは標高700m以下の主な河川沿いに生息していることが分かった.マホロバサンショウウオは四国に生息するツルギサンショウウオとの共通の祖先から分岐した後に,1つのCladeのみが近畿地方南部から広域に分布域を拡大し,岐阜県西部まで分布を広げたと考えられた.岐阜県西部に到達後は高い山地を越えられず,丘陵帯の河川沿いに分布を拡大してきたと考えられた.また,現時点でのマホロバサンショウウオの生息域の最北端,最東端の生息地が岐阜県に存在することが分かった.


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