| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-42  (Poster presentation)

視覚刺激がカメの行動・知能に与える影響とカメのヒト個体識別能力【A】
Effects of visual stimuli on turtle's behavior and intelligence,and the turtle's ability to identify individual humans【A】

*部家司(金沢大学附属高等学校)
*Tsukasa HEYA(Kanazawa Univ. Senior HS)

カメの行動・知能に与える影響とカメのヒト個体識別能力を明らかにすることを目的とし、①鏡や映像の視覚刺激によりカメの行動は変化するのか、②ヒトの個体識別は顔のどの部分から判断しているのか、を検討した。
水槽中のカメの行動(重心位置と方向)をパソコンに取得する行動評価システムを構築し、このシステムと映像・飼育者の顔写真などを用いてイシガメ・クサガメ各5匹の行動を3分間、各カメで7回以上測定した。3分間の総移動距離と視覚刺激を設置した右側面を見ている時間割合の平均値で比較した。
カメの行動における鏡の影響については、鏡があると移動距離は13%増加、鏡のある右側面を見ている割合は19%増加し、カメが鏡に反応していた。また、鏡とiPad黒画面では反射像の明度・精細さが異なるが、より自分の姿がはっきり確認できる鏡の方を見ている割合が大きく、自分の鏡像に反応している可能性が見出された。そこで、カメに見せる映像に自身の姿が含まれる場合と含まれない場合で比較した場合、他個体には警戒している傾向があり、また、鏡に映る自身よりも自身を含む映像の方が、右側面を見ている割合は小さいことから、自身の映っている状態に興味を持っていることが示唆された。
飼育者の顔写真と他人の顔写真でカメの行動の差異を調べた結果、他人の顔写真の方を長く見ていた。この傾向からカメが飼育者を識別できているかを判断した結果、飼育者の顔写真を逆さまにすると識別できず、また、顔上部と顔下部では目などの顔上部を隠すと識別しないことが分かり、カメがヒトの顔の選別において重要としているのは顔の上部(目と眉毛)であることが示唆された。
このように、カメは鏡に興味を示し、カメの行動は鏡により大きな影響を受けた。カメの自身と他個体の映像に対する反応は異なった。カメが人の顔を識別している部位は顔の上部(目や鼻など)であることが示唆された。


日本生態学会