| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-44 (Poster presentation)
ササゴイButorides striatusは魚食性の鳥類で、夏季に繁殖のために日本に飛来する。ササゴイが魚類を捕食する方法は多様で、一般的な捕食行動に加えて餌釣り(Bait-fishing)も行う。これは、ササゴイが釣り餌としてアメンボなどの生き餌や、植物片などの疑似餌を水面に設置し、それにおびき寄せられた魚を捕らえるユニークな捕食行動である。本研究では、ササゴイのすべての捕食行動に着目し、熊本市を中心に熊本県内で餌釣りが確認される河川を明らかにすること、それらの河川における各捕食行動の頻度を明らかにすること、捕食行動が確認された地点において特定の環境データを調べ、捕食行動との関係を明らかにすることを主な目的とした。その結果、捕食行動が確認された5エリアの65地点中、4エリアの15地点で餌釣りが確認された。また、水環境データとして取得した水深(cm)、水温(℃)、透視度(cm)、流速(m/s))のうち、流速のみが餌釣りを行うか否かに影響しているとわかった。また、その流速の平均値は、餌釣りが確認されなかった地点で0.333m/s、餌釣りが確認された地点で0.041m/sと、餌釣りが確認された地点で顕著に遅いことがわかり(t-test、p<0.001)、ササゴイは流速の遅い地点を選んで餌釣りを行ったことが明らかとなった。さらに、観察結果から、1地点の例外的な行動(今年巣立った個体による1例)を除き、流速の速い地点ではそもそも餌釣りを試みないこともわかった。これらから、ササゴイは場当たり的に餌釣りを行っているのではなく、少なくとも流速について、その速さに応じて餌釣りを行うか否かの判断ができるとわかり、ササゴイが特定の状況に合わせて選択的に餌釣りを行うことが示唆された。