| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-48 (Poster presentation)
翅脈の模様は多様で複雑なパターンを有す。昆虫種は頑丈な翅脈が必要であるために、翅脈が太くなり翅脈のあいだにある膜の模様が複雑になっているのではないだろうか。翅の膜構造の差異に興味を持ち、本研究を始めた。本研究では成虫の翅でみられる数学的な構造多様性を明らかにすることを目的とした。はじめに、湖西市、浜松市内でみられたトンボを捕獲した。採集したトンボはトンボ亜目のウスバキトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ。イトトンボ亜目のアオイトトンボの計4種。トンボ亜目の採集場所は、浜松学芸高校敷地内、湖西市白須賀の2か所であった。アオイトトンボの採集場所は、浜松市神ヶ谷、馬郡、吹上の3か所であった。その後、採集したトンボで標本を作製しブロックごとに分け、そのなかの膜構造を計測した。さらに、翅のなかでの多角形の割合を算出した。さらに、作成したグラフの座標を用いて相対距離を算出し、実測距離との関係を評価した。トンボ翅にみられる膜構造の計測した結果、トンボ亜目3種間で大きな差がみられた。ウスバキトンボは、2地点で採集した個体を用いて、前後の翅の個数比を比較した結果、差は見られなかった。アオイトトンボでは、前後の翅の個数比に地域集団間で差が生じていることが明らかになった。膜の多角形構造は、3種のトンボすべてでグラフ上の分布が一致しており、種間で差異は確認できなかった。3地域のアオイトトンボすべてでグラフ上の分布が一致しており、差異は全く確認できなかった。採集個体数が多かったウスバキトンボでは、採集場所による翅の個数比に差がみられなかった。3地点で採取されたアオイトトンボの前後翅の膜の個数比に差がみられた。トンボ4種に共通して、前翅の前縁部に折り畳み構造がみられないということは、雌による性選択や飛翔による制限の影響を受けず、前後翅の個数比が種によって大きく異なることに影響を与える可能性がある。