| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-51  (Poster presentation)

トロ舟は街のほっとステーション ~コンテナビオトープに集まる水生昆虫の多様性~【A】
Mortar tub is the hotto station in town ~Diversity of aquatic inseacts living in mortar tub【A】

*小林将大, 是賀柳之介, 水谷架士羽, 山田耕平(浜松学芸高等学校)
*shota KOBAYASHI, Ryunosuke ZEGA, Kashiwa MIZUTANI, Kohei YAMADA(Hamamatsu Gakugei High School)

2023年の夏に水面をみるとアオモンイトトンボ幼虫が止まっており、ちょうど羽化するタイミングであった。僅かな面積の水面にも水生昆虫が移動し、産卵・孵化・成長・羽化することに気付き、水生昆虫が新たな生息環境を求めてどれほど移動できるのか疑問を抱いた。本研究では、都市域に不足している止水域環境の代替機能を果たすことができるか検証すること、トロ舟を設置するのに最適な環境を明らかにすること、Deep Learningを用いて個体数データ収集の省力化を目指すことを目的とした。トロ舟の生物相調査では校内の9か所にヒシ全被覆処理区、ヒシ50%処理区、ヒシが全く入らない対照処理区の3つを設置し、飛来する水生昆虫の種名と個体数を2週間ごとに調査した。環境要因調査では360度カメラ、光量子計を用いて、校内に設置したトロ舟上面において、開空率、光量子束密度を求め、各地点での平均開空率、平均光量子束密度を算出した。さらに、トロ舟の水温とその水面上の気温を計測した。調査を通じて、トロ舟から合計9種の水生生物種が確認でき、特にマツモムシ、トンボ亜目、イトトンボ亜目が多く確認できた。マツモムシ、イトトンボ亜目ではトロ舟の水面の見えている面積に関係していることが分かった。トンボ亜目では、水面の面積には影響を受けないことが分かった。ユスリカでは調査開始時でピークに達し、夏季には個体数が大きく減少した。他水生生物では薄暗い環境下でのみ確認された。環境要因では最高水温と最低水温の温度差と開空率とのあいだには正の相関がみられた。また、画像解析では水生生物の検出率は70~80%に達した。水を入れたトロ舟を設置するだけの簡易的な方法で、都市域に不足している止水域環境の代替機能を果たすことができることが明らかになった。マツモムシ、イトトンボ亜目では、光反射認識能力により、新たな生息場を探索していることが示唆された。


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