| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-53  (Poster presentation)

荒川水系における外来カワリヌマエビ属の拡大【A】
Spread of alien shrimp of Neocaridina sp. in the Arakawa River system【A】

*日下友結, 吉廣咲希, 三浦珠稀, 早坂真祐美, 服部ふたば(川越女子高等学校)
*Yuui KUSAKA, Saki YOSHIHIRO, Tamaki MIURA, Mayumi HAYASAKA, Futaba HATTORI(Kawagoe Girls High School)

 川越女子高校生物部では、2016年から埼玉県河川における体長3cmぐらいのエビの分布を継続調査している。カワリヌマエビ属のエビNeocaridinaは、中国などから釣り餌や観賞用として日本に入ってきた外来種で、遺伝子解析によっていくつかの分岐群が認められるが、形態だけでの分類は難しい。(0nuki&Fuke,2022)。荒川水系では、高麗川以外の河川で在来種は見つからず100%カワリヌマエビ属が占めていることがわかった。昨年度の調査に引き続き、荒川水系におけるカワリヌマエビ属に埼玉では国内外来種となるミナミヌマエビNeocaridina denticulataが含まれていないかを調べるため、立正大学との共同研究を行いミトコンドリアDNAのよる遺伝子解析を行った。
 その結果、本校がサンプリングしたすべての地点で、カワリヌマエビ属のエビは、すべて国外の外来種(主にシナヌマエビNeocaridina davidi)のハプロタイプをもち、ミナミヌマエビのハプロタイプは確認できなかった。これらのハプロタイプは、多くの地点で多岐にわたっていた。しかし、立正大学でサンプリングした荒川本流の2個体でミナミヌマエビのハプロタイプが検出された。このことは、埼玉にもすでにミナミヌマエビが侵入していることを意味する。シナヌマエビとミナミヌマエビが混在する地点では、交雑の痕跡・核遺伝子組成が認められる(0nuki&Fuke,2022)ことから、埼玉の少なくとも荒川のエビは、シナヌマエビとミナミヌマエビの混ざり合った核遺伝子をもつ可能性が高い。
 ミナミヌマエビの侵入経路については不明であるが、人為的に導入された可能性が高いと考える。また、国外由来のカワリヌマエビ属については、遺伝的に多様化した個体が持ち込まれたと考えられる。カワリヌマエビ属のエビは多産で繁殖力が高いため、生息地域の拡大を進めているが、核遺伝子の組成は交雑によって混沌とした状態にあると考えられる。


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