| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-55  (Poster presentation)

準絶滅危惧種ヌカエビの生態環境と保全【A】
Ecology and conservation of the near-threatened species,'Paratya improvisa'【A】

*加瀬輪, 上村絢奈, 牧口芽生, 野中和奏, 瀧口遥, 綿谷美咲(川越女子高等学校)
*Rin KASE, Ayana KAMIMURA, Mei MAKIGUCHI, Wakana NONAKA, Haru TAKIGUCHI, Misaki WATATANI(Kawagoe Girls High School)

 埼玉県内の荒川水系で体長3㎝前後の在来種であるヌカエビParatya improvisa(=以降、在来エビ)と外来種であるカワリヌマエビ属のエビNeocaridina spp.(=以降、外来エビ)の分布状況を15か所で調査し、調査結果からなぜ外来エビが分布を広げているのか、在来エビがどのような生息環境を必要としているかを明らかにする。
 在来エビと外来エビの人工飼育を40cm水槽にて行ったところ、在来エビは繁殖することができなかった。そこで、企業連携により整備されたビオトープに在来エビの放流を5月に行ったところ、6月には稚エビが確認され、繁殖が成功した。分布調査から、100%在来エビしかいない高麗川上流2地点は、護岸工事がされておらず、自然環境が守られていることが分かった。しかし、自然環境が守られている場所でも、都幾川では在来エビが全く見つからない。そこで、水環境の比較データを調べたところ、高麗川は他の河川に比べCOD/全窒素/全亜鉛/LAS等の数値が低いことが分かった。
 在来エビが生息する河川は、護岸工事がされていない流速の違いでできる多様な水環境と抽水植物や藻類の分布による定着可能な環境があり、農薬や生活排水の流入が少ない水質が維持されている。人間の活動により河川を整備管理する目的で行われる護岸工事によって在来エビの生育場所をなくし、さらに生活排水や農薬が追い打ちをかけて在来エビが繁殖できない状況を生んでいると考える。ビオトープでは、地下水をくみ上げているため、農薬や生活排水の流入がなく、水質が維持されているために在来エビが繁殖できたのではないかと考える。在来エビは生息域を減らしており、保全は急務である。


日本生態学会