| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-58 (Poster presentation)
各都道府県において、環境DNA分析を利用した研究事例は年々増えているが、学校教育現場に環境DNA分析が広く普及するには、まだまだハードルが高い。理由として、環境DNA分析の第一工程である環境水の濾過において、例えば、グラスファイバーフィルターを用いた濾過法は、それ専用にアスピレーターのような高額機材を導入する必要がある。そのような実情がある中、環境DNA学会へ参加し情報収集する過程で、カートリッジ式フィルター(以下、ステリベクス)を用いた濾過を発展させた高額機材を必要としない「重力濾過法」という新手法を知るに至った。本研究では、従来のグラスファイバーフィルター(ワットマン社GF/F、孔径0.7µm)を用いた濾過法とステリベクス(メルク社SVHV010RS、孔径0.45µm)を用いた重力濾過法を比較し、将来的に重力濾過システムが学校教育現場への環境DNA分析の普及の可能性を秘めているか検証した。本校近くのコイ(指標魚)が生息する河川で採水した河川水を撹拌機で撹拌しながら河川水を各濾過法用に等量ずつ分取した後、河川水を各濾過法で濾過した。DNA抽出試薬(キアゲン社DNeasy Blood & Tissue Kit)を用いて、各濾過法で濾過したフィルターからDNA抽出を行った。なお、ステリベクスからDNA抽出を行う際、本校には乾熱滅菌器とミニローテーターが無いため、ウォーターバスとヒートブロック、手作り回転装置を代用した。各濾過法で抽出したDNAサンプルをDNA定量アッセイ(サーモフィッシャー社Qubit)でDNA濃度を定量した。その後、各DNAサンプルに含まれるコイのミトコンドリアDNA(シトクロムb領域)と核DNA(ITS1領域)の量をqPCRで定量した。検証の結果、技術面だけでなく労力面や費用面も含めると、学校教育現場では重力濾過法の方が魅力ある可能性が得られた。