| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-61 (Poster presentation)
(1)背景:
2023年の研究で10万枚以上の写真を撮影してさまざまな花の訪花昆虫を調べた結果、ユキノシタに夕方多数の蚊が来ていたことを発見した。また、 ユキノシタに来ていた蚊はおしべを足場にしていた。
(2)仮説:
つくば固有種のホシザキユキノシタは花弁の一部が雄しべに変化したものだ。 ホシザキユキノシタの花弁が退化した理由は訪花昆虫の蚊が訪れやすいようにするためではないか。
(3)研究の目的:
ホシザキユキノシタの花弁が雄しべに変化した理由を訪花昆虫との関係から明らかにする。
(4)実験の方法:
・ホシザキユキノシタの撮影を行い、37775枚の写真から日中と、夕方~夜間の訪花昆虫の比較を行った。
・退化花弁雄しべの花粉に稔性があるか調べるため、花粉をコットンブルーで染色し顕微鏡で観察した。
(5)実験結果:
・ホシザキユキノシタの日中の主な訪花昆虫はハチやアブだったが、ユキノシタ同様、夕方の主な訪花昆虫は蚊だった。蚊とアブは、退化花弁雄しべの葯や変形花弁の先端を足場にしている様子が観察された。ハチは体が大きく、蜜線や通常の花弁を足場にしていた。
・変形花弁の先端でも縁で花粉が作られていた。
・ホシザキユキノシタの通常の花弁も内部で花粉を作っていたことを発見した。
(6)考察:
・ホシザキユキノシタもユキノシタ同様に夕方から夜にかけて蚊が訪花することが判明した。蚊はユキノシタの仲間の重要な訪花昆虫かもしれない。
・ホシザキユキノシタがわざわざ受粉率の低い花粉を作ってまで花弁をおしべに進化させた理由は、重要な送粉者である蚊やアブに送粉してもらうためかもしれない。
・おしべが花弁に進化することは八重咲きの花などで知られているが、それとは反対に花弁がおしべに進化することも訪花昆虫との関係であるのかもしれない。