| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-62 (Poster presentation)
浦和西高校敷地内にある斜面林では定期的に保全活動が行われており、その中でアズマネザサの刈り取りが実施されている。この刈り取りの効果を検証し、より良い斜面林の維持管理方法を検討するために実験を行った。
実験では、ササを月1回のペースで刈り取る実験区と、刈り取りを行わない対照区を、それぞれ2m四方で林内に設定した。そして、2区画の地表面照度、地表面温度、植生の被覆面積をそれぞれ調査し、比較を行った。
結果として、アズマネザサを除去した実験区では、林床照度が増加したことにより、植生の種類が顕著に増加した。とりわけ、コナラ、エノキ、イヌシデ等の陽樹の芽生えが増加した。反対に、アズマネザサを除去しない対照区では、5月から8月の林床照度が低下し、アズマネザサ以外の植生の被覆面積が、ほとんど増加しなかった。このことから、アズマネザサの刈り取りは、林床照度を増加させ、植生の多様化、とりわけ陽樹の芽生えを促すことが確かめられた。
一方で、実験中には芽吹いても枯れてしまう陽樹の芽生えも観察された。また、林床照度の差は林冠の葉が成長した9月以降非常に小さくなった。このことから、より良い斜面林の維持管理方法を検討するためには、芽生えた後の陽樹の生育状況を調査し、生育を促すための維持管理の方法についても今後実験を行う必要がある。今後は、斜面林の維持管理による林床照度の変化が、植生の一個体一個体の成長に及ぼす影響についても調査することを考えている。