| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S03-2  (Presentation in Symposium)

バッタ・チョウ類相の草原継続期間における変化【O】
Temporal changes in grassland duration for orthopteran and butterfly community【O】

*平山楽(神戸大学), 古川広野(筑波大学・山岳セ), 冨髙まほろ(筑波大学・山岳セ), 田中健太(筑波大学・山岳セ), 丑丸敦史(神戸大学)
*Gaku HIRAYAMA(Kobe Univ), Koya FURUKAWA(MSC, Univ. Tsukuba), Mahoro TOMITAKA(MSC, Univ. Tsukuba), Tanaka KENTA(MSC, Univ. Tsukuba), Atushi USHIMARU(Kobe Univ)

 草原は高い生物多様性を維持する主要な陸上生態系の1つであり、完新世において火入れ・放牧・草刈りなどの人為的管理により維持されてきた。人為的に管理される半自然草原であっても長期間草原環境が維持されてきた古い草原の生物多様性は非常に豊かであること、新規に成立した草原でも、草原を管理・維持する期間が長くなるほど植物の種数増加や種組成変化がみられることが報告されている。このような長期の管理継続による植物多様性・種組成の変化は、植物を資源とする植食性昆虫の多様性・種組成にも影響を及ぼすことが予想される。
 本研究では、以下の仮説を検証した:草原の継続期間の増加にともないバッタ・チョウ類の(1)種数・個体数が増加し、(2)種組成が変化する。本調査は、長野県上田市の菅平高原・峰の原高原スキー場草原を対象に、おそらく数千年以上(少なくとも300年以上)草原環境が維持されてきた古草原と、古草原が一度森林化した後に樹木伐採により造成されてから維持されている新草原(計18地点)と、長野県上田市の草原継続期間が1~410年と異なる、ため池堰堤草地(計17地点)で実施した。
 その結果、バッタ・チョウ類ともに、菅平高原とため池堰堤で一貫して、草原継続期間が長くなるにつれ個体数が増加し、ため池堰堤では種数も増加した。また、種組成は草原継続期間の長短により異なり、種組成の違いはバッタ類よりもチョウ類でより顕著であった。これらから、歴史の古い草原では植物だけでなくバッタ・チョウ類の多様性も高くなることが示された。発表では、これら植食性昆虫の多様性や種組成の草原継続期間に伴う変化について、植物との相互作用の観点から考察する。


日本生態学会