| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S03-6  (Presentation in Symposium)

草原管理は斜面崩壊にどのような影響を与えるか:発生確率と発生規模に着目した分析【O】
How does grassland management affect landslides? An analysis focusing on the probability and scale【O】

*浅田寛喜, 皆川朋子(熊本大学)
*Hiroki ASADA, Tomoko MINAGAWA(Kumamoto Univ.)

気候変動による災害リスクの増大に伴う適応、及び急速に劣化しつつある生物多様性・生態系への対応として、自然を基盤とした解決策(NbS:Nature-based Solutions)が注目され、災害リスクの低減の文脈では、生態系を活用して防災・減災(Eco-DRR: Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)の推進が求められている。特に土砂災害に関しては、植生は根系をとおして土壌の強度を高め、斜面崩壊のリスクを低減することが知られている。
熊本阿蘇地域には、日本最大級の草原が分布しており、草原に依存する貴重な動植物が多く生息・生育している。草原の維持管理手法として、野焼き(火入れ)や放牧、採草が実施されており、維持管理手法の違いにより出現する植物種が異なることが報告されている。そのため、維持管理手法の違いにより根系の量や分布、土壌特性も変化することが予想され、これらの違いは斜面崩壊に対しても影響を与えている可能性がある。しかし、草原の維持管理手法の違いが斜面崩壊に与える影響を定量的に分析した研究はほとんどみられない。
そこで、本講演では、阿蘇地域において、草原における維持管理手法の違いが斜面崩壊の発生確率や崩壊規模に与える影響について分析した結果を報告する。研究においては、GISを用いて、草原の維持管理の情報に加え、斜面崩壊に影響を与える地形や地質、及び雨量等のデータを収集した後、評価モデルとして一般化線形モデル(GLM)を構築した。GLMの結果より、火山砕屑物の地質において、野焼きが維持されている斜面は野焼きが放棄されている斜面と比較して崩壊確率が小さいことが明らかとなった。また、火山砕屑物以外の地質においては、放牧と野焼きが実施されている斜面は、放牧のみが行われている斜面より崩壊確率が小さいことが示された。


日本生態学会