| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S04-1  (Presentation in Symposium)

モニタリングサイト1000調査の目的と意義【O】
Objectives and significance of the Monitoring Sites 1000 Project【O】

*雨宮俊(生物多様性センター)
*Shun AMEMIYA(Biodiversity Center of Japan)

環境省生物多様性センターでは、全国の生物多様性の状況を面的に調べる「自然環境保全基礎調査」と、全国に設置した定点で生態系のモニタリングを行う「モニタリングサイト 1000」を両輪として、自然環境の把握を行っている。モニタリングサイト1000の目的は、わが国の代表的な生態系の状態を長期的かつ定量的にモニタリングすることにより、種の増減、種組成の変化などを検出し、生物多様性保全施策に資することである。
2022年に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、愛知目標の後継となる「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、これを受けてわが国では、2023年に「生物多様性国家戦略2023-2030」が策定された。この戦略の行動目標の中に、「強固な体制に基づく長期的な基礎調査・モニタリング等を実施する」ことが明記され、その具体的な重点施策の一つとしてモニタリングサイト1000が位置付けられている。2030年ネイチャーポジティブの国際評価に我が国の情報をインプットするための「生物多様性及び生態系サービスの総合評価2028(JBO4)」では、モニタリングサイト1000の調査成果が、我が国の生物多様性の変化傾向の主要な評価根拠として活用されると見込まれる。
モニタリングサイト1000では、研究者や地域の専門家、NPO、市民ボランティアなど、多様な主体の参加により調査が継続されている。調査で得られたデータは、モニタリングサイト1000のウェブサイトなどを通じて広く一般に公開され、行政の保全施策や、現地のさまざまな関係者による保全活動や教育現場などで活用されている。特に、5年に1度、調査開始時からの全データを分析した「とりまとめ報告書」では、我が国の生物多様性の変化に関する新たな知見を公表しており、社会的に注目されている。


日本生態学会