| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S04-2  (Presentation in Symposium)

高山植物の開花フェノロジー変動とポリネーターとの季節性ミスマッチ【O】
Dynamics of flowering phenology of alpine plants and its impact on phenological mismatch between flowers and pollinators【O】

*工藤岳(北海道大学)
*Gaku KUDO(Hokkaido University)

温暖化と雪解けの早期化は、高山生態系に様々な影響を及ぼしつつある。高山植物と主要送粉昆虫であるマルハナバチの共生関係も、温暖化の影響を受けると予測される。北海道大雪山系では、モニタリングサイト1000高山帯の調査の一環として市民ボランティアの協力を受けながら、高山植物の開花フェノロジーとマルハナバチ類のモニタリングが2010年から継続されている。過去14年間に蓄積されたデータを解析した結果、高山植物群落の開花時期は、1℃の温暖化と10日間の雪解けの早まりによって11日間短縮されると予測された。一方で、マルハナバチの働きバチの出現時期は温暖化の影響を受けにくく、マルハナバチの活動期と高山植物の開花時期との間にミスマッチが生じることが判明した。さらに、マルハナバチの個体数は年変動が激しく、猛暑年に個体数が減少する傾向が認められた。開花時期とのミスマッチがマルハナバチ個体数変動に及ぼす影響は種によって異なり、高山帯に定住するマルハナバチ種に深刻な影響を及ぼすと予測された。一方で、高山帯に採餌に訪れる低地性のマルハナバチ種は、開花期後半に咲くアザミ類を選択的に利用するため、開花フェノロジーの早期化は有利に作用すると予測された。これらの結果は、温暖化に伴い高山帯のマルハナバチ相が変化する可能性を示している。


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