| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
シンポジウム S04-6 (Presentation in Symposium)
2004(H6)年度から始まったモニタリングサイト1000(以下MS1000と表記)シギ・チドリ類調査は沿岸域モニタリング調査の一つである。現在、干潟などを中心に全国137の調査サイトで、春・秋の渡り、越冬の時期に、シギ・チドリ類などの種と個体数を市民調査員がカウントしデータをとる。これを事務局が集計してデータベースとして管理し、渡りと生息域の状況と生態系を把握する調査である。調査地はシギ・チドリ類の利用する水田など内陸湿地も含む。
市民によるシギ・チドリ類のカウント調査は、日本野鳥の会・日本鳥類保護連盟が1973年に呼びかけた「シギ・チドリ類全国一斉調査」が始まりである。MS1000の調査員にはこの時から継続調査されている方々もいる。1985年まで行われたこの調査のまとめは研究誌Strixに、日本野鳥の会研究部「シギ・チドリ類全国一斉調査結果」として1985年12月に発行された。これによれば繁殖地への春の渡りのシギ・チドリ類全種の合計個体数の年平均は、96,300羽であった。MS1000調査開始前、2000-2003年の「シギ・チドリ類個体数変動モニタリング」では平均41,300羽。20年で半分以上の減少は1965年以降の大規模開発による生息地消失が原因と考えられる。MS1000シギ・チドリ類調査開始後、大規模開発は無いものの、一様でないが減少は続き、2019-22年は27,500羽である。これはシギ・チドリ類全体の生存に対する負の条件の存在を示唆する。
ただ、シギ・チドリ類は種ごと独自であり、全ての種が一律に減少してはいないが、シギ・チドリ類の現状を探るため事務局の行った、特徴的な種についての個体数・分布の現況・変化、気候変動を含む環境条件や、人為的干渉の影響に関する分析の結果、また国際的なさまざまな取り組み、保全の課題についての考察の一端を紹介する。
同時にこの調査が市民調査から始まったことも踏まえて、調査における市民と行政との協力、また市民科学と研究者との協働作業の意味について私見を述べたい。