| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S04-7  (Presentation in Symposium)

モニタリングサイト1000調査の成果と課題【O】
Results and challenges of the Monitoring Sites 1000 Project【O】

*高橋啓介(生物多様性センター)
*Keisuke TAKAHASHI(Biodiversity Center of Japan)

モニタリングサイト1000 第4期とりまとめでは、20 年間の継続調査で得られたデータの解析により、日本の自然環境について様々な異変がとらえられた。里地や森林・草原ではスズメやヒバリ、内陸湿地や沿岸域ではシギ・チドリ類、小島嶼ではカモメ類などいくつかの生態系で生物種の減少が見られた。気候変動の影響と考えられる現象も発生しており、陸域では高山帯でのハイマツの生長量の増加、森林での暖かい気候を好む樹種の個体数増加と寒い気候を好む樹種の個体数減少、海域ではアマモ場・藻場の衰退や消失、サンゴ礁での夏期の高水温が原因とみられる白化現象の頻繁化などが確認された。さらに、外来種問題も明らかになっており、森林・草原ではガビチョウ、ソウシチョウが分布拡大し、小笠原諸島の原生林ではアカギやパパイア、グリーンアノールなどが侵入している。その一方、沖縄島北部の森に生息するヤンバルクイナは、マングースによる食害で個体数が減少していたが、防除活動が功を奏し、個体数が回復傾向にあることが確認されるなど、外来種対策の効果が見られた場所もあった。
これらモニタリングサイト1000の調査結果は、個々のサイトや地域での保全活動だけでなく、国や地方自治体の保全施策及び環境アセスメントの基盤情報、さらに国際的な生物多様性の保全施策、気候変動対策など、様々な活用がなされている。その一例として、「生物多様性国家戦略」では、各種取り組みの基盤となる情報源としてモニタリングサイト1000 が位置づけられている。
このような成果が得られている一方で、いくつかの課題も生じている。特に、調査の継続はどの生態系でも大きな課題である。同じ調査者が当初から調査を続けている場合も多く、後継調査者の不在から調査継続を断念するサイトもある。モニタリングサイト1000を今後も継続させていくために、多くの方々の調査協力が必要である。


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