| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) S06(O)-01  (Oral presentation)

アカマツ枝食害調査を用いたシカ採食圧及び捕獲事業の評価【S】
Evaluation of deer feeding pressure and capture project using red pine branch feeding damage survey【S】

*島田慎吾(兵庫県立大・地域資源, 豊岡市農林水産課), 藤木大介(兵庫県立大・自然研), 内藤和明(兵庫県立大・地域資源)
*SHIMADA SHINGO(RRM,Univ.of Hyogo, Toyooka City), DAISUKE FUJIKI(INES,Univ.of Hyogo), KAZUAKI NAITOH(RRM,Univ.of Hyogo)

ニホンジカ(Cervus nippon)の過剰増殖に対応するため狩猟や有害鳥獣捕獲による個体数調整が全国で行われており、兵庫県北部に位置する豊岡市では毎年約6,500頭が捕獲されている。一方で基礎自治体が捕獲事業の効果や課題を分析するには情報が限られており、効果的・効率的な対策を進めるためには更に詳細な情報が必要である。また、捕獲事業がどのようにニホンジカに影響を与えているのか、有害捕獲事業の実施主体である有害捕獲班員の活動に着目した分析が必要であると考えられる。本研究では、ニホンジカの不嗜好植物であるアカマツ(Pinus densiflora)を指標植物とし、新梢の採食率を2024年5月~7月の期間に市内155カ所で調査し、GISで空間補間処理を行い市全体の採食率を可視化し、2020年度に兵庫県が行った同様の調査結果と差分を取ることで採食率の経年変化も分析し、現状把握及び課題の抽出を試みた。加えて、ベイズGLMMを用いて2024年度のアカマツ枝採食率に影響を与える要因を解析した。その結果、「2020年度のアカマツ枝採食率」と「行政区の重心点から4kmバッファ内に居住する罠有害捕獲班員数」が2024年度のアカマツ採食率に影響を与えており、かつランダム項として設定した市内の6地域間で採食圧にばらつきが存在することが明らかとなった。2020年度のアカマツ枝採食率は2024年度のアカマツ採食率に対し正の相関関係が得られたことから2020年度の採食率が高い行政区では現在の採食率も高く、4kmバッファ内に居住する罠有害捕獲班員数は2024年度のアカマツ採食率に対し負の相関関係が得られたことから班員数が多い行政区は現在の採食率が低いことが明らかとなった。一方、現在の対策で採食率を15%程度までは減少させることはできるが、10%以下とするためには銃による集団捕獲などの追加的な対策の必要性が示唆された。


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