| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) S06(O)-08 (Oral presentation)
種子散布は多くの種子植物において分布拡大や更新における重要な過程である。果実食者による摂食を介して種子散布される植物種では、果実形質に基づいて主要な種子散布者がある程度予測できると考えられている。例えば、小型で香りが弱く鮮やかな色をしている果実は鳥類によって種子散布され、大型で香りが強く地味な色をしている果実は哺乳類によって種子散布される傾向がある。
日本に生育する植物には主要な種子散布者が哺乳類であることを想起させる果実形質をもつ種が含まれる。しかし、国内において、そのような哺乳類によって主に種子散布される果実に注目した研究事例は鳥類によって主に種子散布される果実のそれと比べて少ない。
日本固有種であるサンショウバラ Rosa hirtula(バラ科)の果実は大型でかつ甘い香りを放つことから、主に哺乳類によって種子散布される可能性がある。本研究では、サンショウバラの種子散布者を明らかにするために、自動撮影カメラによって果実を消費する脊椎動物を野外調査した。その結果、果実を消費した脊椎動物の多くがニホンジカだとわかった。これまでの研究により、シカ科の摂食による種子散布が報告されているものの、その摂食の過程で種子が破壊される場合もある。よって、ニホンジカがサンショウバラの有効な種子散布者であるかは不明である。