| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S06-6  (Presentation in Symposium)

シカ管理体制の現状と今後の展望【O】【S】
The current state and future prospects of deer management【O】【S】

*飯島勇人(森林総合研究所)
*Hayato IIJIMA(FFPRI)

ニホンジカによる様々な影響を管理し、許容可能な水準で維持するためには、ニホンジカの数と、ニホンジカによって受ける影響の両方について、広域で比較可能なデータをモニタリングする必要がある。本発表ではモニタリングに着目し、現状と今後の展望を議論する。現在、鳥獣保護管理法で位置付けられている特定計画制度の元で、都道府県ごとにニホンジカの数、農林業被害、生態系への影響についてモニタリングが行われている。しかし、それらのモニタリングは、そもそもモニタリング手法として適切でなかったり、手法が都道府県間で異なっていたり、同じ手法であっても精度に大きな違いがあり、広域で比較可能なモニタリングとは言い難い状態にある。これらのモニタリングデータに様々な補正を施すことで広域比較を可能にするための研究も行われているが、今後のモニタリングにおいては広域比較が可能なように標準化した方法で実施することが望ましい。現在、ニホンジカの数についてはいくつかそのようなモニタリングが始まっている。一方、生態系への影響のモニタリングについては、標準化が遅れている。防鹿柵はニホンジカの影響を完全に排除できるという点で標準化はされているが、個々の柵のサイズは小さいこと、設置目的が研究間で異なるため測定項目も異なり相互比較が難しいという問題がある。そのため、今後は共通の測定項目を持った柵内外の比較を広域で実施するとともに、既存のデータを共有できる枠組みを作成することで利活用を促進する必要がある。


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