| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
シンポジウム S09-5 (Presentation in Symposium)
浅い湖では、水が透明で沈水植物が優先した状態と、水が濁って藻類が優先した状態という代替安定状態が見られる。ここに浮葉植物を加えると、第三の安定状態が生じることが考えられる。生物群集に含まれる種数が増えると、代替安定状態の数はどのように増えていくのだろうか。生物群集が取りうる代替安定状態の数を調べることは、種組成の変動の理解や予測において重要である。その重要性にも関わらず、種数と代替安定状態の数の関係を調べた理論研究はほとんどなかった。
種数が増えると、群集が取りうる種組成の組み合わせの数が爆発的に増加するため、代替安定状態の数を解析的に解くことが困難となり、数値計算によって調べる必要が出てくる。そこで、群集動態の数理モデルを構築し、初期値をランダムに設定して数値計算を行い、最終状態を複数のカテゴリーに分類し数えあげることで代替安定状態の数を調べる方法が行われてきた。しかし、このようなアプローチでは計算量が莫大になり、現実的な時間では解けず、代替安定状態の数を近似的に調べることしかできなかった。
そこで本発表では、現実的な計算時間で、代替安定状態の数を近似せずに数値的に直接求める方法を提案する。この手法では、生物間相互作用によって確率的に状態が遷移する群集動態の数理モデルとエネルギー地形解析を組み合わせ、代替安定状態を分類し数えることができる。この手法を用いて、種数と代替安定状態数の関係が、相互作用の結合・強度パターンによってどのような影響を受けるかを調べ、議論する。