| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S10-2  (Presentation in Symposium)

市民参加行動型の水田生物多様性調査研究での試行錯誤 : 徳島県における事例【O】
Trial and Error in Participatory Action Research of Biodiversity in Rice Fields: A Case Study of Tokushima Prefecture【O】

*飯山直樹(エコー建設コンサル), 稲飯幸代(徳島保全生物学研究会), 石川茂夫(兼業農家、阿波市)
*Naoki IIYAMA(Echo Co.,Ltd), Sachiyo INAI(Conservation Biology Tokushima), Shigeo ISHIKAWA(Part-time Farmer in Awa City)

 徳島県内の地理的条件の異なる6地域で水田における生物調査を続けてきた。調査は市民参加型で7年実施し「鳥類に優しい水田がわかる生物多様性の調査・評価マニュアル」(2018、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター)を用いた。このマニュアルでは関東や北陸といった地域ごとに調査対象である指標生物と確認された個体数による評価の高低を変えて評価を導いていく。取組を進めるなかで、それぞれの地域において調査方法の適合を図ることは特に重要であることを認識した。
 例えば当地域で指標生物に採用されているサギ類は比較的に小面積圃場が多い場所では採餌する圃場とそれ以外の圃場との違いが、調査時間内では十分に把握できなかった。
他方でアシナガグモ類は捕虫網よるスイーピングでよく捕獲され、指標植物についても同様にうまく指標生物として機能しているようであった。
 また生物多様性評価スコアを低下させる阻害要因としてスクミリンゴガイの侵入が強く影響していた。指標生物には採用されていないがスクミリンゴガイの存在で水田雑草を含む植物は激減し明らかにバイオマスが低下したことがわかるだけでなく水稲の欠株を生じさせていた。
 市民と取組む場合は、評価法について理解しやすさに配慮して地域適合を考えた以下の指標を採用したいと考えた。指標生物にはアシナガグモ類、水生コウチュウ類、植物の3種目を構成とし、加点としてマニュアルのとおりの絶滅危惧種Ⅱ類以上のカエル類に、追加として阻害要因の侵略的外来生物を減点指標として採用したい。すでに半数にあたる3地域でスクミリンゴガイが生息していることと調査に係る市民には納得が得られやすいと考えた。指標生物以外の絶滅危惧種、侵略的外来生物についても指標に活かすためには市民調査における生物同定の技術も習得が求められると考えている。


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