| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S10-4  (Presentation in Symposium)

栃木県における多面的機能支払交付金による田んぼ生きもの調査の事例【O】
Case study of the rice paddy biodiversity survey in Tochigi Prefecture, utilizing the Multifunctional Payment Grant【O】

*守山拓弥(宇都宮大 / 農学)
*Takumi MORIYAMA(Ustunomiya Univ. / Agronomy)

①全国調査:平成13年度に開始し平成21年度に廃止された農水省・環境省連携による「田んぼの生きもの調査(以下、全国調査)」では、開始当初から魚類、両生類を対象分類群とし、その後水生昆虫と外来種が追加された。分類精度は種レベルで、実施者は土地改良技術者が中心となる。調査マニュアルを公開し、かつ全国の農政局単位で研修会を毎年実施することで調査方法の統一と精度確保が図られてきた。種同定は撮影方法が厳密に定められた写真を用いた写真同定であり、各分類群の研究者によりすべて同定され、写真と同定結果、位置情報が整理された。②栃木調査:多面的機能支払交付金による「田んぼ生きもの調査(以下、栃木調査)」の対象となる分類群は主に魚類、両生類、水生昆虫で、その他の種も報告可能である。分類精度は基本的に種レベルである。全国調査と異なる主な点は、実施者が主に農家により構成される多面的機能支払活動組織(以下、活動組織)である点と、種同定を生物の専門家にアドバイザーが行う点である。調査毎にアドバイザーに参加してもらい、確認生物の同定と説明をし、参加者の学習も行う。平成22年度には68.5%の組織がアドバイザーの協力をえたとの報告もある。なお、捕獲生物の写真も提出する仕組みだが、集積された写真による確認作業は行われていない。③その他調査:活動組織を対象に写真で生物種を示した調査票を配布し、栃木県における昭和30年代の生息生物の分布を明らかにしている。また、同様の調査を全国の活動組織(各都府県20組織程度)を対象に実施している。対象分類群は魚類、両生類、水生昆虫を対象としている。分類精度は基本的には種レベルであるが、一部の種で属レベルである。④今後の課題:生きもの調査の実施主体の労力低減や農家以外の主体による実施、同定精度確保の仕組みづくり、データの集積と利活用などが挙げられる。


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