| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S11-2  (Presentation in Symposium)

集団挙動の能動的推論による解析【B】【O】
Collective behavior modeling from active inference【B】【O】

*堀井雅信, 阿部真人(同志社大学)
*Masanobu HORII, Masato ABE(Doshisha Univ.)

生命現象において、細胞集団から個体の群れ、さらに人間の社会まで様々な階層で集団的挙動がみられる。特に「集合知」と呼ばれるような現象に代表されるように、集団化によって個別の場合では見られないようなパフォーマンスの向上が発現する場合があり、そのメカニズムの解明に興味が持たれている。計算機の発達により集団挙動研究は発展し、今日に至るまで現象ごとに有力なモデルが数多く提案されてきたが、集団化により見られる様々な特質の発現メカニズムを統一的に説明することはこれまでなされてこなかった。これは複雑な認知メカニズムの様々な側面を現象ごとに単純化してモデル化が行われてきたため、モデルが現象に依存し、現象の範疇を脱却できなかったためであると考えられる。一方で近年、神経科学的観点に基づいた能動的推論(自由エネルギー原理)が生物の認知行動モデルとして提唱された。この理論は人工知能研究の発展により整理されつつある認知モデルに必要な条件を満たし、現状医学、工学などの諸分野で注目されている。認知と行動を紐づける理論であるため、外部環境の変化に対する動物の行動変化を説明するモデルとしても有用と考えられ、今後動物行動学など生物学において重要な位置を占めることが予測される。今回は、能動的推論の本質である変分ベイズ推論を行うエージェント間において、コミュニケーションにより外部環境の変化を認識するモデルを考え、集合知の成立を説明する最小限のモデルを考える。これによって能動的推論の集団挙動への応用の試金石となることを目指すとともに、今後動物の行動モデリングにおける能動的推論の利用を考える材料となることを目指す。


日本生態学会