| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S11-7  (Presentation in Symposium)

鳥類における協同繁殖:進化の背景を考える【B】【O】
Cooperative breeding in birds: its evolutionary backgrounds【B】【O】

*江指万里, 高木昌興(北海道大学)
*Mari ESASHI, Masaoki TAKAGI(Hokkaido University)

他個体を「助ける」という行動は、昆虫から哺乳類まで幅広い生物種で見られ、その適応的意義については数多くの研究がなされてきた。特に、血縁関係のある個体を助けることで自身の適応度を上昇させる「包括適応度」をもとにした考えや、血縁関係が無くても、それ以外のメリットが十分に大きければ、進化し得るとする仮説などが多くの生物種で議論されている。
鳥類においては、1割以下の鳥種で、つがい以外のヘルパーと呼ばれる個体が繁殖に参加する協同繁殖が報告されている。どのような種や集団で協同繁殖が行われるかは、系統解析や種間比較によって主に研究が行われ、生息環境の影響が大きいとされている。しかし、協同繫殖が集団内で生じる具体的な条件の特定に至った研究は少ない。
本研究では、沖縄本島の亜種リュウキュウオオコノハズクの繁殖モニタリングを行った結果、従来は一夫一妻制と考えられていた本個体群において、雄のヘルパーの存在が確認された。本種の他個体群では協同繁殖が確認されていないことから、沖縄個体群特有の繁殖形式である可能性が高い。そこで、本個体群における協同繁殖の実態を詳細に記録すると共に、協同繁殖は繁殖つがいやヘルパー個体にとってどのようなメリットや意義があるのかを議論するため、給餌頻度や繁殖成績、血縁関係を網羅的に調べた。本種の別個体群とその繁殖生態や社会行動を比較することで、亜種リュウキュウオオコノハズクの事例をケーススタディとし、鳥類における社会性の進化について議論する。


日本生態学会