| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
シンポジウム S12-1 (Presentation in Symposium)
一回繁殖型の生活史をもつタケ・ササ類(イネ科タケ亜科)の一斉開花・結実・枯死現象は、その規模や頻度、生態学的・社会的影響の大きさから、これまで多くの関心を集めてきた。本現象に関する調査は、タケ・ササ類の形態分類や生活史に関心をもつ研究者や愛好家のみならず、病理学や野生動物の個体群動態など、さまざまな分野の専門家によっても実施され、現地調査に基づく記録が次第に蓄積されてきた。報道機関による記録も多い。しかし、既存の記録は依然として分散しており、体系的な理解には至っていない。そのため、「何がどのように珍しいのか」という点についても、明確な認識が得られていないのが現状である。
本発表では、過去約1世紀にわたる国内のタケ・ササ類の開花現象、とりわけ大面積に及ぶ事例に着目し、情報の再収集と整理を行った成果を報告する。1900年から2024年までの125年間にわたる情報を整理し、各分類群において一斉開花・結実・枯死現象が「いつ」「どこで」「どのような頻度」で発生したのかを明らかにする。また、2022年から2023年にかけて、北海道の八雲から宗谷に至る各地で同調して発生したササ属(主にチマキザサ節・クマイザサの仲間)の開花現象を取り上げ、過去の事例と比較検討し、その位置づけを示す。
さらに、広域に及ぶ現象の記録手法の一例として、発表者らがこの2年間に実施した調査(主に道路沿いからの情報収集)および関連情報の整理(インターネット上で公開されている情報や国有林内のデータを含む)の状況についても紹介し、情報共有を図る。