| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
シンポジウム S12-2 (Presentation in Symposium)
2023年に北海道の各地で確認されたササの一斉開花枯死について, 人工衛星リモートセンシング・北海道全域スケールの現地調査・過去の開花枯死に関する記録の可視化の3つの観点から議論する. ササは一斉に開花枯死することで, 森林生態系に大きな影響を及ぼしうるため, その現状 (開花枯死した領域・開花枯死した種類・開花枯死の周期など) を把握することが必要とされている. しかし, このような現状把握は十分に行われていない. そこで, 人工衛星が取得したデータを解析することによって, 北海道全域を対象とし, 開花枯死領域の客観的かつ面的な推定に取り組んだ. HLSと呼ばれる人工衛星データから, 植生の量・活性などを総合的に表現できる指数: Normalized Difference Vegetation Index を計算し, 時系列変化を解析することで開花枯死領域を推定した. ササが分布する領域の大部分を占める落葉樹林と草原・湿原を対象とし, 95%以上の精度でササの開花枯死領域を抽出することに成功した. 次に, 現代の人工衛星リモートセンシングでは得られない詳細な情報, 例えば, 開花枯死したササの種類, を把握するために, 北海道全域で現地調査をした. 現地調査は, 2023年と2024年に合計55日実施し, 離島を含む北海道ほぼ全域の主要道路沿いを調査した. 最後に, 過去の開花枯死記録を収集・整理・可視化することによって, 60年もしくは120年と言われるササの開花枯死周期の推定に取り組んだ. その結果, 60年前には開花枯死に関する記録が発見されなかった一方で, 120年前にはササの開花枯死に関する記録が発見された. さらに, 人工衛星データから推定された2023年の開花枯死領域の多くは, 120年前にも開花枯死が報告されていた. 以上のことより, 2023年に開花枯死したササの開花枯死周期は120年であることが示唆された.