| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S12-3  (Presentation in Symposium)

歴史資料による過去の一斉開花の探索からササ類の開花周期を考える【O】
Searching for past synchronous flowering using historical data  to consider the flowering cycle of dwarf bamboo species【O】

*岡本透(森林総研関西)
*Toru OKAMOTO(FFPRI Kansai)

タケ・ササ類には、種ごとに一定の開花周期があることは、世界的にも古くから注目されて多くの分野で研究が行われてきた。日本においても1960年代までは、歴史資料に基づく開花周期の解明に関する研究は活発に行われてきたが、開花周期は60年から120年と曖昧な表現にとどまり、1960年代以降はほとんど進展のない状況である。日本国内を対象にしたこれまでの研究の問題点としては、全国規模で検討しているために開花範囲が明確ではない、ササの種類を特定せずに検討している、資料数が少ないことなどがあげられる。ササ類の開花に関する資料は、第二次世界大戦以前にはササの実が救荒食物として注目されていたこともあり、実の収穫に関するものがほとんどである。実の収穫量を記載した資料は、ササが部分開花ではなく、結実を伴う一斉開花を示していると考えられる。実を収穫したことを記載した同年の資料が複数の地域で確認された場合には、一斉開花の規模、範囲を推定することができる。地方名や本草書の区分に従ったササの種類が記載される資料からは、工芸利用などササを利用する目的によって当時の人々がササ類を識別していたことが分かる。さらに、一斉開花したササが現在の分類の何に該当するかを検討する際に活用することもできる。これらに留意し、対象地域を絞って資料を収集し、ササの種類ごとに一斉開花した年を整理すると、一斉開花を1~3回前ほどはさかのぼることができることが見えてきた。


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