| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) S13(O)-01  (Oral presentation)

鳥の鳴き声学習ツールとりトレの効果検証:体験者の種判別能力と鳥への関心の変化から【B】【S】
Effectiveness of a birdsong learning tool "TORI-TORE": Changes in participants' species identification skills and interest in birds【B】【S】

*小川結衣(筑波大学, 国立環境研究所), 深澤圭太(国立環境研究所), 吉岡明良(国立環境研究所), 熊田那央(バードリサーチ, 国立環境研究所), 竹中明夫(所属なし), 上條隆志(筑波大学)
*Yui OGAWA(University of Tsukuba, NIES), Keita FUKASAWA(NIES), Akira YOSHIOKA(NIES), Nao KUMADA(Bird Research Association, NIES), Akio TAKENAKA(Unaffiliated), Takashi KAMIJO(University of Tsukuba)

市民科学(Citizen Science;シチズンサイエンス)の手法を用いた鳥類モニタリングにおいて、録音された鳴き声から種組成把握がなされている。しかし、録音音声から種判別する技能を持つ参加者育成が課題であった。発表者らは音声種判別技能向上のためのクイズ形式のオンライントレーニングツール「とりトレ」を開発した。本研究は種判別テストの点数および意識の点から1)とりトレに効果があるのか、2)開発したとりトレのアルゴリズムが従来法(選択肢が完全にシャッフルなクイズトレーニング、以下ベースライントレーニング)と比べて効果があるのか、ランダム化比較試験を用いて検証した。具体的には、<実験1>最初に開発した、不正解した種を重点的に出題する「アダプティブアルゴリズム」との比較(2021年1月 66名)、<実験2>アダプティブアルゴリズムの改良版である2つのアルゴリズム(実験1から判明した覚えやすい種を多く出題する「頻度調整アルゴリズム」、学習者が出題頻度を変更できる「対話型アルゴリズム」)との比較(2023年1,9-10月 106名)を行った。実験1,2ともに参加者は種判別テスト、4日間のトレーニング、およびアンケート調査を受けた。結果、アダプティブアルゴリズムを備えたトレーニングを実施したグループはベースライントレーニングを実施したグループ(以下ベースライングループ)より種判別テストの点数が低かったものの、頻度調整アルゴリズムを備えたトレーニングを実施したグループはベースライングループおよびアダプティブグループと比べて有意に点数が高かった。一方、対話型アルゴリズムを備えたトレーニングを実施したグループとベースライングループに点数の差は認められなかった。意識の点では、すべてのグループでトレーニング前と比べたトレーニング後の鳥類に対する有意な関心上昇が認められた。本研究の成果は、市民科学のさらなる拡大とデータの質の向上に貢献することが期待される。


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