| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) S13(O)-02  (Oral presentation)

マイクアレイによる公園のにぎわい可視化技術とその生物多様性調査への応用可能性検討【S】
Park Activity Visualization with Microphone Arrays and Its Potential for Biodiversity Assessment【S】

*柳楽浩平, 宮崎滉平, 水本武志(ハイラブル株式会社)
*Kohei NAGIRA, Kohei MIYAZAKI, Takeshi MIZUMOTO(Hylable Inc.)

都市公園は都市における生態系の保全や環境教育の場としての役割を担い、生物多様性の維持・向上が求められている。生態系保全のための生物調査は重要だが、その調査には高いコストや労力がかかるため、効率的なデータ取得手法が必要である。さらに、公園利用者が生物多様性を実感し、関心を持つ機会を提供することも市民の協力を得るために重要である。

本研究では、マイクアレイを用いて公園内の「にぎわい」を可視化するシステムを提案する。本システムは、複数のマイクアレイを公園内に設置して音声データを収集・解析し、公園のにぎわいやその場で鳴いている鳥の種をリアルタイムで可視化し、サイネージを通じて公園利用者へ提示する。

従来、生物多様性調査には定点カメラや人手による観察が用いられてきたが、カメラの死角におけるデータ取得の難しさや、長期運用のためのコストや手間の増大という課題があった。本システムはマイクアレイで収録した音声を自動で分析するため、カメラのような死角はなく、人手による長期運用の負担を軽減できる。さらに、公園利用者向けに情報を可視化することで、生物多様性への関心を高めることにも寄与する。

音声の収録には防水加工を施したマイクアレイを使用し、外部電源供給型と内蔵バッテリー型の2種類を設計した。にぎわいの評価には、マイクアレイで収録した音声の到来方向解析を活用し、各区画の音源の存在確率をヒートマップ形式で推定する。また、鳥類の種判別には、公園で事前に収録した鳴き声や環境雑音データを用いて学習した識別器を導入する。利用者向けの情報提供には、これらのデータと公園のイベント情報、天気情報などを統合し、リアルタイムで表示するサイネージを活用する。

本発表では、東京都の日比谷公園において実施している本システムの実証実験の概要を報告し、本システムの生物多様性調査への応用可能性について議論する。


日本生態学会