| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
シンポジウム S14-6 (Presentation in Symposium)
惑星保護(Planetary Protection)は、地球の微生物による他の天体の汚染を防ぐこと(フォワード汚染の防止)と、地球外の未知のバイオハザード等による地球の汚染・危険を防ぐこと(バックワード汚染の防止)を目的とした活動である1, 2)。惑星保護上の要求は探査対象や目的によって異なる。火星、木星の衛星エウロパ、土星の衛星エンケラドスは、生命体が存在する可能性が比較的高いことや、地球微生物が持ち込まれた際に現地で増殖する可能性があるため、探査する際は微生物汚染の管理が求められる。日本はこれまでに宇宙探査機の微生物汚染管理の経験を有しておらず、惑星保護は、将来探査を実現する上での技術課題の一つと位置付けられている3)。我々は現在、無人での火星着陸探査時のフォワード汚染の防止に向けた要素技術開発を進めている。
基準を満たした火星着陸探査を実現するには、運用のための標準やハンドブックの準備、クリーン設備の整備、宇宙機にダメージを与えずに微生物汚染を低減する方法の確立、微生物汚染の検出やモニタリング手法の確立、ミッションの各段階における国内外のコミュニティによる審査と承認および、運用準備および実際の運用、といった要素が求められる。本発表ではそれぞれの課題を整理すると共に、これまで行ってきた研究結果について紹介したい4-6)。
1) COSPAR Policy on Planetary Protection. Space Research Today, 2024.
2) 惑星等保護プログラム標準 JMR-014A, JAXA共通技術文書, 2023.
3) 宇宙技術戦略. 内閣府, 2024.
4) 木村ら. ミッションに関連して思うこと. 宇宙科学研究所, 2023.
5) Kimura, Suzuki et al. Front. Microbiol., 2023.
6) 小澤, 木村ら, Viva Origino, 2024.