| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


シンポジウム S15-5  (Presentation in Symposium)

日本の亜熱帯林と温帯林における甲虫群集の垂直分布【O】
Vertical stratification of beetle assemblages in subtropical and temperate forests of Japan【O】

*吉田智弘(東京農工大学), 代島泰地(東京農工大学), 石塚達也(東京農工大学), 中辻宏平(東京農工大学), 鵜川信(鹿児島大学)
*Tomohiro YOSHIDA(Tokyo Univ. Agri. Tech.), Taichi DAIJIMA(Tokyo Univ. Agri. Tech.), Tatsuya ISHIZUKA(Tokyo Univ. Agri. Tech.), Kohei NAKATSUJI(Tokyo Univ. Agri. Tech.), Shin UGAWA(Kagoshima Univ.)

森林の垂直層構造は、生息する生物群集の異質性を増加させており、垂直層構造が生物群集に及ぼす影響を明らかにすることは、森林生態系における構造的複雑性と生物多様性の関係を明らかにするうえで重要である。また、多くの研究では、森林昆虫などの多様性調査は、調査の容易さと合わせて、森林下層の群集が森林全体の群集を反映しているという仮定の下に、森林下層において実施されているが、森林の昆虫群集は垂直層によって大きく異なることが予想される。そこで本研究では、日本国内の異なる気候帯(亜熱帯と温帯)において、林冠―森林下層間の甲虫群集のβ多様性がどのように異なるかを検証した。亜熱帯(奄美大島)および温帯(八王子、佐野)の広葉樹林において、林冠(約8 m)と森林下層(1 m)に衝突板トラップを設置して、甲虫を採集した。調査の結果、甲虫の出現種数は3地点とも、林冠よりも下層において多かった。また、どの地点においても林冠―下層間の群集の非類似度(β多様性)は高く、群集構成はこれら2層間で有意に異なっていた。SDR-simplex法を用いて、林冠―下層間の群集のβ多様性に対する、類似度、個体数の違い、種の入れ替わりの相対的寄与を評価した結果、奄美大島(亜熱帯)と八王子(温帯)の地点では、種の入れ替わりが大きく寄与しているのに対して、佐野(温帯)では個体数の違いが強く効いていた。以上の結果は、亜熱帯林と温帯林の両方の垂直層で甲虫群集は大きく異なっており、その差異をもたらす要因は地点によって異なることを示している。


日本生態学会