| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
シンポジウム S17-2 (Presentation in Symposium)
陸域生態系の光合成による総一次生産量(GPP)を推定することは、全球物質循環の理解と予測のために必要である。リモートセンシング手法は広域における評価のために欠かせないが、なかでも太陽光によって励起される植生のクロロフィル蛍光(Solar-Induced chlorophyll Fluorescence; SIF)に近年着目が集まる。しかしSIFからGPPを精確に求めるには、実験的な知見の蓄積されている個葉から、遠隔観測の可能な葉群(または林冠)へのスケーリングを考慮する必要がある。そのような検出スケールの違いを解くには放射伝達モデルが有用である。SIF検出には高波長分解能ハイパースペクトル測器を用いるが、蛍光を導出するための手法開発は日進月歩である。また広域データを用いた解析では、地上連続観測による衛星観測の検証が求められている。
私たちは蛍光放出諸過程の理解に基づくモデル開発と実測データによる検証を実施してきた。今回の内容として観測と放射伝達モデルについて、1)水田や湿地でのSIFとGPPの関係、2)小麦畑における群落構造と幾何に関するFLiES-SIF放射伝達モデル、3)温帯林におけるSIFとGPPの関係をより詳しく調べるための鉛直多層観測、4)既往の分光データからSIFを精度よく推定するためのaFLD法について示す。また熱帯林・亜熱帯林から冷温帯林まで含むSIF地上観測網とGOSAT-2/sentinel-5P衛星によるSIF季節変化の検証や次期衛星(GOSAT-GW)についても紹介する。本講演ではデジタルバイオスフェア課題に関連し、地球規模の陸域生態系観測の進歩につなげるためSIF観測の課題と展望について話題提供したい。