| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W01-2  (Workshop)

雑草の匂いがトウモロコシの品質を変える【O】
Weed volatiles change the quality of corn【O】

*石崎智美(新潟大・理), 櫻井裕介(新潟大・院・自然科学), 村山柊(新潟大・院・自然科学), 塩尻かおり(龍谷大・農), 高林純示(京大・生態研センター)
*Satomi ISHIZAKI(Niigata Univ., Dep Sci), Yuusuke SAKURAI(Niigata Univ., Sec Tec), Shu MURAYAMA(Niigata Univ., Sec Tec), Kaori SHIOJIRI(Ryukoku Univ.), Junji TAKABAYASHI(Kyoto Univ.)

 植物は昆虫の食害を受けると被害部位から匂い物質を放出する。この匂い物質が周囲の健全な植物に伝わると、周囲の植物は実際に食害を受ける前に防御機構を強化することがある。この現象は同種間どうしだけでなく異種間、さらに人工的につけた傷から放出される匂いでも生じる。
 農業において作物の生育を阻害、または病害虫の温床になる雑草を取り除く作業は必要不可欠であり、田畑周辺では草刈りが行われている。この草刈りにより発生する雑草の匂いは作物の抵抗性や成長量に影響を与える可能性があり、雑草の匂いを農業に利用できる可能性がある。本研究では、雑草の匂いの利用可能性を探るため、雑草の匂いがトウモロコシの食害抵抗性・生育・繁殖に影響を与えるかどうかを検討した。
 発芽7日後のトウモロコシを、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、これら二つの雑草を混合したMIXのいずれかの匂いに7日間暴露させた。無曝露の苗をControlとし、処理苗とControl苗を圃場で栽培した結果、匂い曝露した3つの処理では、Controlに比べて葉の被害が有意に少なかった。また、セイタカアワダチソウの匂いあるいはMIXを曝露すると、Controlよりも分げつ枝と総葉数が多くなった。MIXを暴露した場合、雌穂数が有意に増加した。また、種子に含まれる糖度は、匂い曝露した3つの処理でControlよりも有意に高かった。さらに、食味試験でも、Controlのトウモロコシに比べ、匂い曝露によって糖度が高くなったトウモロコシのほうが甘いと感じる人が多かった。これらのことから、トウモロコシでは雑草の匂いを暴露することで、食害に対する抵抗性を強化するだけでなく、品質も向上させることが示された。雑草の匂いを曝露することで、分げつ数が増え、その結果、光合成を盛んに行うことができ種子の糖度が高くなったと考えられる。


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