| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
自由集会 W02-2 (Workshop)
Rパッケージは多くの研究者によって日常的に利用されており,生態学分野においても不可欠なツールとなっている.しかし,パッケージ開発の手順を体系的に説明した資料は限られており,その基本的な考え方や手法を理解している人は少ない.個々の支援パッケージを効率的に利用する上でも,これらについて理解することが望ましい.そこで本講演では,発表者のRパッケージの開発過程を紹介する.具体例として,自動撮影カメラで撮影された動物の種を深層学習により判定するパッケージを取り上げる.開発は(1)パッケージの基本構造の構築,(2)関数のドキュメント作成,(3)テストコードの作成と実行という手順で進めた.特に開発の中核をなす(3)では,ソフトウェア分野の手法であるテスト駆動開発(TDD)を導入した.TDDとは,なるべく小さい規模の関数とそのテスト(期待される出力と実際の出力の比較)を単位として実装を進める開発アプローチを指す.これまで発表者は(おそらく多くの研究者がそうであるように),解析の手順を1つのスクリプトにすべて書き下していた.こうした書き方は,プログラムが大きく複雑になると,一部のコードを変更した際に他の部分に及ぼす影響の把握が困難になる.特に,頻繁な追加・修正が必要なパッケージ開発においては大きな障壁となる.しかし,R言語では,TDDにおけるテストがtestthatとdevtoolsパッケージにより自動化されており,意図しないプログラムの誤作動を即座に検出できる.その結果,編集中のコードにのみ集中することを可能にし,作業効率が大幅に向上した.本講演で共有する開発経験と実践的な手法が,Rパッケージ開発の一助となれば幸いである.