| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
自由集会 W03-1 (Workshop)
グリーンインフラは、防災・減災対策やにぎわい創出のみならず、ネイチャーポジティブに向けた重要なアプローチである。日本においても、この10年間でグリーンインフラの政策的枠組みが整備され、地域レベルでの取り組みが加速している。本発表では、グリーンインフラの地域実装に関する最新動向を整理し、科学的知見と政策の接続を図るための課題と展望を議論する。まず、日本におけるグリーンインフラ政策の進展を概観する。2015年に公表された「国土形成計画」において初めてグリーンインフラの概念が示され、2019年の「グリーンインフラ推進戦略」では具体的な施策が示された。さらに、官民の連携を促進するため、「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」が構築され、国や自治体レベルでの制度的支援が拡充された。この結果、地域主体の取り組みを促進する仕組みが整備されている。次に、地域レベルでのグリーンインフラ導入に向けた制度や支援策について整理する。国土交通省等による補助金制度、地方自治体の計画策定支援、事業支援などが進められ、さらに、企業や研究機関、NPOと連携した住民参加型のワークショップやガイドライン整備も推進されている。これにより、地域ごとの多様なグリーンインフラの実践プロセスが展開されている。また、これまでのグリーンインフラの導入が生物多様性保全にどのように寄与してきたかについて、ハード(物理的インフラ)とソフト(制度・運用面)の両側面から分析する。具体的な事例を通じて、グリーンインフラが社会的・経済的利益をもたらしつつ、生物多様性の保全と利用を促す実践プロセスを紹介したい。最後に、グリーンインフラのさらなる普及とネイチャーポジティブの実現に向けて、今後の展望を論じる。生態学の研究者や実務家にどのような貢献が期待されているのか、多様な視点から議論を深め、持続可能な地域づくりに向けた方策を探る。