| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W07-1  (Workshop)

当年生実生33種を用いた根と葉形質から見る地上部と地下部の同調と菌根タイプの関係【O】
Evaluating the relationship between mycorrhizal types and above- and below-ground coordination by using root and leaf trait of 33 tree seedlings【O】

*鈴木桂実(東北大学), 梶野浩史(東北大学), 廣川周作(東北大学), 冨松元(東北大学), 門脇浩明(京都大学), 彦坂幸毅(東北大学)
*Katsumi SUZUKI(Tohoku Univ.), Hirofumi KAJINO(Tohoku Univ.), Syusaku HIROKAWA(Tohoku Univ.), Hajime TOMIMATSU(Tohoku Univ.), Kohmei KADOWAKI(Kyoto Univ.), Kouki HIKOSAKA(Tohoku Univ.)

植物の成長や生存には根と葉の機能を同調させ、体内の元素バランスを保つことが不可欠と考えられている。先行研究ではそれぞれ葉と根の重量当たりの資源獲得能力を表すSLA(葉面積/葉重量)とSRL(根長/根重量)の間の正の相関に着目して、機能的同調を評価することが多い。しかし、これら結果は必ずしも一致しない。そこで、本研究では先行研究間でSLAとSRLの間の相関関係が一致しないのは菌根菌による根形質の影響を考慮していないからと考え、共通圃場で栽培した樹木実生の葉と根形質間の関係を評価した。環境省モニタリングサイト1000の森林サイトから出現頻度が高く、優占している樹種のなかから針葉樹7種と常緑広葉樹7種、落葉広葉樹19種の合計33種の当年生実生を栽培した。川砂を詰めたポットで栽培を行うことで土壌環境を均一にした。5月末に播種し、秋に刈り取りを行い根や葉の形質を測定した。そして、文献を参考に共生する菌根菌の種類で対象種を分類した。主成分分析の結果、SRL、根組織密度、根窒素濃度などがSLAともに1軸に収斂したが、SLAとSRLの関係には大きなばらつきがあった。共生する菌根菌の違いに着目するとSLAとSRLの関係は外生菌根菌と共生する種とアーバスキュラー菌根菌と共生する種の間で切片が大きく異なり、これがばらつきの原因だった。外生菌根菌と共生する種のほうがアーバスキュラー菌根菌と共生する種よりもSLAが同じ値である場合に相対的にSRLが大きかった。この原因は前者のほうが根の直径が小さいからだった。葉形質と根形質の間には強い相関があったが、その関係は共生菌根菌の種類によって大きく分かれることが明らかになった。葉と根の形態形質を用いて機能的同調を評価する際は共生する菌根菌の種類を考慮する必要があるだろう。


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