| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W08-2  (Workshop)

落葉広葉樹二次林を対象としたバイオチャー施用実験【O】
Biochar application experiment in the secondary deciduous broad-leaved forest【O】

*吉竹晋平(早稲田大), 友常満利(玉川大・農・環境農)
*Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa Univ. Agr-Env.)

バイオチャーが、その土壌改良効果、そして近年高まる炭素隔離効果への期待を受けて施用されるのは主に農地である。しかし、大気からのCO2除去とその貯留・隔離という視点から考えると、国土の7割を森林が占める我が国では森林こそが高いポテンシャルを秘めていると言える。しかし、実は森林にバイオチャーを施用して生態系応答を調べた研究例は世界的にも非常に少なく、バイオ炭が森林生態系に及ぼす影響についてはよく分かっていない。そこで我々は、2015年に埼玉県本庄市の落葉広葉樹二次林にバイオチャーを施用し、その後9年に渡って生態系の応答を調べてきた。バイオチャーによる炭素隔離というと、単に「土壌中に変化しない炭を混ぜて炭素を閉じ込めた」というイメージを持たれるかもしれないが、実際にはそう単純な話ではなく、バイオチャーが持つ様々な特性が土壌の物理化学性や土壌生物、そして森林を構成する樹木といった主要な生態系構成要素に影響を及ぼし、その結果として生態系全体の物質循環を変えていく可能性がある。そこで、ここではまず我々が行ってきた実際の森林を対象としたバイオチャー施用実験の概要を紹介し、この後に続く炭素循環への影響、そして森林土壌への影響についての話題提供へとつなげたい。
また、我が国の森林が抱える問題として、里山林や人工林の放棄・荒廃や利用低下(アンダーユース)による生態系サービスの低下があり、新たな付加価値の提示による適切な森林管理の再開や、里山の積極的な利活用を推進することが求められている。我々はこういった森林に存在する未利用の有機物資源(枯死倒木、剪定枝、切り捨て間伐材など)をバイオチャーに変換して森林に戻すことを核とした、新たな森林管理・炭素隔離モデルを構想している。ここではライフサイクルアセスメントにより評価されたこのモデルの有効性や、今後の社会実装に向けた課題などについても紹介したい。


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