| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
自由集会 W08-4 (Workshop)
農耕地へのバイオチャー施用は炭素隔離効果による地球温暖化対策の一つとして盛んに研究されている。その一方で林地へのバイオチャー施用についてはまだ研究例がほとんどないが、炭素隔離の場として適用できるとなれば、適用面積は大幅に拡充されてその効果は絶大となることが期待される。しかしながら、耕起などを伴うことが多い農耕地でのバイオチャー施用は、リター上への表面散布が現実的である林地とは諸条件も大きく異なるために、施用によって土壌にもたらされる影響は別途評価する必要がある。また、施用による土壌への影響を中長期的な時間スケールで評価した研究は極めて少ない。
そこで、本発表ではコナラ二次林にバイオチャーを10t ha-1施用して7年以上が経過した試験区を例に挙げ、施用に伴う中長期的な土壌圏の応答性について調べた結果を紹介する。
土壌含水率と土壌温度の連続モニタリングを行った結果からは、バイオチャー施用による土壌保水効果が施用後7年間に渡って持続すること、また、その効果は温度に依存しないことが示された。加えて、リター層を含めた深度0〜5cmの土壌コアを分析した結果からは、バイオチャー施用による土壌の一般理化学性への負の影響は認められないことが明らかになった。さらに土壌コア分析の結果から、バイオチャー施用から7年間を経てもバイオチャーが土壌に現存し、土壌への炭素貯留効果が発揮されていること、ならびに、表面散布したバイオチャーの一部が鉛直下方へ移動していることが示された。